投稿作品

キス キス キス

作:オバズキ さん

※すべてフィクションです。実在する個人、団体とは全く関係がございません。




 少し体を動かすだけで革張りのソファーは音を立てる。
窮屈な姿勢を直すたびに、キュッという音が鳴る。
それが静かな部屋に、やけに響く気がする。
おばさんが隣に座り、親しげに僕の手を取りながら体を寄せてくる。
なめし皮のぴっちりしたスカートに包まれた白いもも、ひざが僕の脚に触れる。
体が密着する緊張を解きたくて、少し体を横にずらす。
おばさんとの間にちょっとすきまが出来る。それを埋めるように良い匂いが漂ってくる。
首からなのか、あるいは胸の谷間からなのか、それともその両方なのか、植物系の甘い匂い。
きつくはない。落ち着いた絹のドレスに似合う匂い。
どんなに固い心でも、とろかすような、危険な匂い。
首を横に向けおばさんを見ると、目が合う。お互いの息づかいが分かる近さ。
長いまつげ、奥二重、ふっくらとしたまぶたに
グラデーションのかかった茶系のアイシャドーが似合っている。

 蝶が羽を閉じるようにゆっくりと目を細め、僕の目を見つめ、逸らさない。
そのまま体をゆっくりと擦りつけるように、強弱を付けながら押しつけてくる。
「ねえ」
 挑発するように笑いながら耳元に唇を寄せてくる。
脇の下にうっすらと汗がにじんでいる。前が思いっきり開いたノースリーブ。
「ほら、見て」
 肩を動かすとV字に開いた胸元から肉が揺れるのが分かる。
「大きいでしょう」
 同意を求める。街ゆく男達が必ず振り返るおばさん自慢の胸。
西洋なしのようにたっぷりとした形、うっすらと汗を浮かべた果実。
素敵ですね、と返答しなくてはと思うが、声が裏返ったり、掠れたりしたら、
今どんな気持ちでいるのか心の中をすっかり見透かされてしまう。
そうして、黙っていたら、口の中につばが溜まってしまう。
でも飲み込むわけにはいかない。
そんなことをしたらじっと僕の様子を観察するおばさんに分かってしまう。
横顔に当たる視線が痛い。
「どうしたの、そんなに緊張して、遠慮しなくて良いのよ。ほら、見て」
 おずおずと視線を降ろし、胸元に目を向ける。
盛り上がった肉。縦にくっきりと谷間の線。息をするたびに胸が上下に動く。
「そうよ。良いのよ、もっと見て」
 ルージュを引いた真っ赤な唇から白い歯がこぼれる。
「触りたい?」
 僕に聞く。
 無言で頷く。
すると胸を突き出すように押しつけ、僕の手を取ると、ゆっくりと導いてくれる。
服の上からでも手のひらに体温が伝わってくる。
薄い生地を通しておばさんの息づかいも。
我慢していたつばを飲み込むと、可愛いわとおばさんが笑う。

 おばさんの胸は、まるで山芋をすり下ろした様に白くねっとりとした柔らかさだった。
手でこねるように揉むと指の一本一本に絡みつくように肉が盛り上がる。
指先で押すと深々と沈み、持ち上げると吸い付いてくるように元に戻る。
「どう?」
「柔らかい・・・・・・」
「そうよ。柔らかいのよ、おばさんのおっぱい」

 顔を近づけてくる。額が僕のこめかみに当たる。
ゆっくりと向き合う。おばさんは、僕の肩から首、そして背中へと腕を回す。
そして休み無く僕を愛撫する。
まるで羽で撫でられているような気分になり、
じっと我慢して肺に溜めていた空気が堪らず口から漏れた。
「ああ」
 おばさんはもう片方の手で僕の頬を押さえながら、顔を斜めに傾け、唇をすぼめている。
あと数ミリで触れる瞬間、閉じていた唇がすっと開いた。
獲物を狙う食虫植物の花びらのように。
半開きの唇が微かに触れた。僕はアゴを少しあげ、柔らかな花びらを求めた。
掃いた口紅の匂いが分かるほどしっかりと合わさったと思ったとき、おばさんは顔を急に引いた。
てっきりキスをするものだと思っていた僕は、目で問いかける。
 おばさんは意地悪そうに笑うと、じらすように僕の額に自分の額を押しつけた。
「キスしたいの?」
 僕は喉がからからに渇き、しゃべることが出来ない。必死に目で訴える。
「そうキスしたいのね。どんなキスがしたい? こんな・・・・・・」
 と言いながら、ちょんちょんと触れた。
僕は瞼を閉じ、自分の方から唇を突き出した。
すると開いた唇の内側を擦りつけるように押しつけ応えてくれる。
 僕は頭を上下に動かし、意志を伝えた。
もっと激しいキスをして下さいと心の中で何度も叫ぶ。
するとおばさんは舌の先を細くして、楔のように僕の唇を割り、舌を求め、侵入して来た。
歯の裏、歯茎、ねぶるように探りながら僕の中を蹂躙する。
熱くヌルヌルと、おばさんの舌は固くなったり柔らかくなったりしながら、
次第に大胆に、そして横暴になる。
 自分で求めておきながら、だんだん激しくなるおばさんに、
僕の舌はおびえて縮こまってしまう。まるで蛇に睨まれた蛙のように。

「どう、キスの味は?」
 おばさんは息を弾ませながら僕に聞いた。
息を止めていた僕は荒い呼吸を静めるのに苦労する。
「もう一度してあげようか?」
 僕は目をつぶって唇を突き出し、それに応えた。

(END)



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